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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?入門編②

シリーズ初回となる前回は、注目を集めるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何かや注目される背景を紐解き、海外の先進的な事例をご紹介しました。

翻って日本ではどのような状況でしょうか?

前回の再掲となりますが、経済産業省が2018年9月に発表した『DXレポート ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開』では、「2025年の崖」と言われる既存システムがブラックボックス化し、

・市場の変化に対応してビジネスモデルを柔軟・迅速に変更することができず、デジタル競争の敗者になってしまう
・システムの維持管理費が高額化することで技術的負債を抱え、業務基盤そのものの維持・継承が困難になる
・保守運用の担い手不足によりサイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブルやデータ滅失・流出等のリスクが高まる

といったことが危惧されています。

第2回目となる今回は、これほどDXが注目される中にあってなかなか進展しない日本のDX化について、その原因や課題に迫ってみたいと思います。

 

DXを阻む背景

 

1990年代後半からIT化の進展により、従来のメインフレームからオープンシステムへ移行し、RDBMSをはじめ、業務システムとしてERPやCRMなど様々なシステムが企業に導入されていきました。これらのシステムはそれぞれの企業の要求に合わせて、カスタマイズされ最適化されたものとなっていました。その結果、上記の経産省のレポートによると、2018年時点で、同じ基幹システムを21年以上運用している企業は2割にも上り、さらに2025年には6割に達するとされています。

この「レガシー」なシステムの問題点は、老朽化していることは言うに及ばず、長年必要に応じて「部署ごとに」カスタマイズや継ぎ足しを行ってきた結果、システムが非常に複雑化し、だれも全体像を把握できないブラックボックスと化していることです。

現代においてはデータを資産として扱い、分析し、その結果に基づいて経営判断を行う事ができる「全体最適化されたシステム」が必要となっています。

DXを推進するということは、この従来の部分最適なシステムをデータを集約・分析可能な「全体最適化されたシステム」に変容させるということに他なりません。しかし、部分最適され、ブラックボックス化したシステム全体を変容させることは容易ではなく、データ活用が限定的となり、DXの推進が進まないということが懸念されます。

 

部分最適化システムの要因

では、なぜこのような部分最適なシステムを継ぎ足すような事態になり、DXの推進が難しい状況になったのでしょうか?
それには、次の3つの原因が考えられます。

 

1. 人材不足

多くの企業で、多額のIT関連費用を投下していますが、その多くは既存のビジネスの維持・運用に割り当てられており、長期的かつ戦略的な視点からIT投資を行うというところに至っていません。その背景としては、企業内部におけるIT関連の人的リソースやその知識が乏しいということがあるでしょう。そして、全体最適なシステムに変容させようとしても、ある部署にとっては現行のシステムが最適なものとなっているため、いわゆる抵抗勢力となってしまい、そのまま残り続けてしまっているということもあります。
このような全体デザインを考え、それを推し進めることができる人材が圧倒的に不足しているということがあります。

2. ROI

部分最適なシステムから全体最適なシステムへ変容するDXは一朝一夕に完了するものではもちろんありません。その結果、問題となるのがDXのROI(費用対効果)です。長期間におよびプロジェクトとなるため、最初の間は収益が出ない期間がある可能性が高くなります。その結果、途中で撤退といった事になりかねません。

3. 経営層の意識

最後に、このような社内の知識や人材不足、ROI、さらに部署ごとの分断などの現状に対しての危機意識が低い経営層の存在が挙げられます。企業が長年時間をかけて構築・改修してきたシステムは業務との依存性が高く、一見最適のように思えます。事実、おそらく短期的に見れば最適ではあるでしょう。また全体最適を行おうとすると、ITシステムだけではなく、企業の組織構造を大幅に見直し、再構築する必要があります。その結果、既存のシステムのユーザーからの抵抗も大きなものとなります。そのような背景から経営層は、現状のシステムに落ち着き、部分改修を続けるという選択を行ってしまいがちになります。
しかし多くの市場では、AIや最新デジタル技術を使いデータを資産として活用したビジネスモデルを展開する新しいスタートアップが次々と現れています。そしていわゆる破壊的イノベーションを起こし、市場を大幅に変化させています。
結果として、気づかぬうちに既存の企業はその大きな波に飲み込まれ、気付いたときにはすでに手遅れになってしまいかねない状況となっています。

 

DXを推進するには

 

上記のような課題を抱えている企業は、どのようにDXを推進していけばいいでしょうか?

何よりも大切なのは、経営層のDXへの決意です。時間もコストもかかるDXは痛みを伴う一大変革であることは間違いありません。しかし通らねば企業の明るい未来がない大きな関門です。このような関門は、経営層のコミットなくして、成功はありえません。経営層自らが、自社が抱えるリスクを洗い出し、DXのビジョンを掲げることが重要なのです。そしてそれをもとに、DXにおけるシステムガイドラインを策定し、関係者が同じページにのるようにすることが必要です。

 

DXの推進方法

そして、実際のDX推進にあたっては、「Small Start, Fail First(スモールスタート、フェイルファースト)」が重要です。

スモールスタートとは言葉の通り、「小さく始める」ことです。第一歩としてDXの対象となる対象を絞りこみ、小さい規模で始め、成功させます。
そしてそれを繰り返すことで、小さな成功を積み上げていきます。その中で試行錯誤を繰り返すことで、DXに対する知識・技術・ノウハウが徐々に社内に積み上がっていきます。

そしてフェイルファーストとは、「素早く実行し、失敗して、失敗から学ぶ」ということです。最初から100%上手くいくDXはありません。必ず何らかの失敗はあるでしょう。失敗があることを前提にして、計画を完璧にした後に実行するのではなく、最小実行計画を策定し、それをどんどん実行することで、失敗から学び、改善していきます。いわゆるアジャイルな考え方に近いやり方で実行していくのです。その方が結果的に早く100%に近づけるでしょうし、ノウハウや経験など得る物も多いはずです。

 

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DX推進に対する課題や危機意識を高めるためにも、まずは冒頭にご紹介した経産省が発表したDXレポートを読み込んでみてください。その上で自社にとって何が必要なのか、そして何ができるのかを考えてみましょう。重要なのは、問題意識を持つことと、ベストプラクティスを知った上で、自社へと適用できる柔軟さです。

次回は、DXを実現していく上でのアプローチや必要なアクションについて、経産省のDX推進ガイドラインの内容を読み解いていきたいと思います。

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