BLOG

DX

海外諸国におけるDX事情 北米編②

新型コロナウィルスの影響が長期化するにつれて、各企業が潜在的に持っていた弱点が浮き彫りになってきています。その弱点を克服する方法としても、DXは注目されており、企業全体の戦略として投資が続いています。
そこで今回は、前回に引き続いて日本貿易復興機構の調査レポート(2020年9月)に基づき、世界最大のDX市場であるアメリカにおけるDXの成功事例とその鍵、そして日本企業への示唆について見ていきたいと思います。

4つのDX

Disruptive(破壊的な)技術の登場により、それを活用した新興企業によって既存のビジネスモデルに基づく企業が脅かされる一方で、新しいビジネスチャンスも生み出しています。
そのような背景の中、Mckinseyのレポートによると、わずか8%の企業だけが既存のビジネスモデルがデジタル技術が進歩する中でも通用すると考えおり、大多数の企業が市場で取り残されることに恐怖を感じ、DXを推進しようとしています。

TechNexus Venture Collaborative 社の代表取締役を務める Andrew Annacone 氏によると、DXは次の4つに分類されます。

1. ビジネスプロセストランスフォーメーション
RPAやAIなどを活用することで、従来の業務の効率化を図る

2. ビジネスモデルトランスフォーメーション
ビジネスで価値を提供する方法を変革する

3. ドメイントランスフォーメーション
従来の商品・サービス自体を再定義する

4. 文化・組織トランスフォーメーション
デジタル世界に対する組織の概念プロセス、人材・能力を再定義する

ここで勘違いすべきでないことは、4の文化・組織トランスフォーメーションがなされないと1から3のDXは実現できないというように思うことです。確かにより革新的かつアジャイルに組織が動くように啓蒙することは重要ですが、DXにおける多面性を理解し、経営陣のコミットのもと、どのようなタイプのDXが可能なのかを各部門が協力し、チームとして実行していくということが何よりも重要なのです。

では、実際にそのような体制でDXを成功させた事例を見ていきたいと思います。


DXを成功させた事例

Domino Pizza(ドミノピザ)[ビジネスプロセストランスフォーメーション]

世界中に 15,000店舗以上を展開する米宅配ピザサービスチェーン大手 Domino’s Pizza 社は、「焼きたてのピザを注文後 30分以内に配達する」という徹底したサービスルールで市場シェアを拡大してきました。スマートフォンの急激な普及を受けて、DXに着手し、2010年に「Anyware Campaign」をDXキャンペーンとして実施しました。このキャンペーンは、顧客1人当たりが 1 回の宅配ピザの注文に費やす金額は限られており、同金額を増やすことより、多くの顧客により頻繁に Domino’s 社のビザを注文してもらえるようにする(すなわち、ピザの注文にかかる手間を極力なくす)ことが大幅な売上アップにつながる可能性が高いという仮説に基づいて実施されたものです。具体的には様々な場所・デバイスからいつでも簡単にピザを注文することができるプラットフォームが開発されました。このプラットフォームでは、iOSやAndroidといったスマートフォンはもちろんGoogle Home, Amazon Alexa、Facebook Messenger、SMS、スマートTV、スマートウォッチと言ったデバイスから、数百万種類に及ぶピザ生地、ソース、トッピングの組み合わせからユーザーが選んだピザを簡単に注文することが可能となりました。

参考:https://www.youtube.com/watch?v=XGcGorvzq-c&feature=emb_title

そして結果として現在ではデジタルオーダーで年間20億ドルの売上(売上全体の半分)を記録し、6年間に渡り2桁成長を続けることに成功しています。

ThyssenKrupp Elevator [ドメイントランスフォーメーション]

以前の記事でも取り上げたドイツ、エッセンにある世界最大規模の鉄鋼工業製品メーカーThyssenKrupp。そのエレベーター事業部門である、ThyssenKrupp levatorでは2015年に同社製エレベーターに数千の IoT センサー/システムを搭載し、クラウド上でエレベーターの動作状況のデータをリアルタイムで収集し、その状況に基づいて特定の部品の修理・交換時期を予測し、対応する予測保守サービス(プレディクティブ・メンテナンス)「MAX」を開始しました。MAXではエレベーターのモーターの状況からドアの動作までエレベーターに関するすべてのデータをリアルタイムで集積し、ダッシュボード上でデータを保存・管理できるようになっています。そして、残存耐用年数や故障の兆候を判断し、サービス技術者にアラートをあげるようになっています。

参考:https://www.youtube.com/watch?v=wHHaqgONRSQ

このように、技術者による1台1台従来点検・保守が必要となっていたものをデータ解析により、大幅な業務軽減をはかり、故障する前に対応するという新しい価値提供にも成功しています。2020年1月時点で北米における82,000基以上、世界10カ国における128,000基のエレベーターが MAX IoTプラットフォームによりサポートされています。


DXを成功させる鍵

これら2つの例のように、アメリカにおいてもビジネスで生き残っていくためにはDX推進が鍵となります。では、そのDXを成功させる鍵としては、どのようなことが考えられるでしょうか?

McKinseyのレポートによると、次の5つが挙げられます。

1. 明確な目的にフォーカスする
ビジネスの成果に結びついた目的を設定し、経営陣がそれにコミットすることでDXを推進することが必要です。

2. 組織を横断したものにする
以前も述べましたが、DXの本質は全体最適です。つまり部署ごとに成立するものではなく、企業全体のビジネスを俯瞰し、組織を横断したものにすべきです。

3. 定期的な見直しと調整を可能とする
現代のテクノロジーの進歩やそれに伴うビジネス環境の変化のスピードは著しく、方針を一度決定したからと言ってそれを見直さず突き進むのは危険と言えるでしょう。少なくとも毎月戦略や方針を見直し、状況に合わない部分は調整するなどの対応が必要となります。

4. アジャイルな思考・体制
2とも通じますが、サイロ化した組織では全体最適を行うことが難しく部署間のコラボーレーションも生み出されません。コラボレーションを生み、リスクを許容する思考や体制づくりが重要です。もちろんそのような体制を生み出すための人材の誘致・育成も重要です。

5. DXのリーダーシップおよび説明責任の明確化
1とも通じますが、DXはビジネスリソースの配分や方向性を大幅に変更するものです。そのため、経営陣がコミットし、大きく関与し、だれが責任をもっているのかを明確化することが重要です。

 

まとめ

日本の企業は、これらDX成功の鍵をどのように活用していけばいいのでしょうか?

これまでの連載でみてきたように、日本でもDXに対する関心は急激に高まっています。その一方で、日本企業では部署ごとに最適化し、サイロ化されたシステムが多く、横断的な活用がむずかしくなっていたり、システム自体がブラックボックス化しています。

しかし、折しも新型コロナウィルスの影響で、従来のビジネスを取り巻く環境は大きく変化しました。この変化したwithコロナの「ニューノーマル」な時代において、テクノロジーの重要性がますます高まっています。この状況をピンチではなく、チャンスととらえ、上記でふれたような鍵を携えて、これまで以上に、顧客、ステークホルダー、従業員、パートナーといった人を中心に考え、そこから生まれるイノベーションに注目し、ビジネスモデルを再構築していくことが成功のポイントといえるのではないでしょうか。

 

Cogent Labsは、手書き文字や活字をはじめとしたあらゆる文字をデータ化する『SmartRead』というサービスをご用意してます。文字の認識率99.22%の技術力から、データ入力業務の効率化とコスト削減できるソリューションです。

AIを活用した文書のデータ化からDXを推進!
AI OCRを超える文書読取り&自動仕分け「SmartRead(スマートリード)」はコチラ>>